「そんなアジアに騙されて」
著者 浜なつ子 角川書店 1500円
アジアにのめり込んでしまった男たちの物語

昨今、海外旅行本はガイドブック、有名人の紀行エッセイ、放浪ものなどあまたとある。本著はその大量の旅行本群の中で異彩を放っている。簡単にこの本を要約すれば、ベトナム、タイなど東南アジアにのめり込んでしまった男たちの物語である。日本人男性6人が登場するが、彼らは旅行者としてではなく、移住者としてその土地と向き合う。目的は一攫千金を目当てとした経済的移住者ではない。きっかけは、たまたま、ひょんなことから。それをさらりと聞き出す著者の力量も注視すべきものだ。
本著に登場する各都市は、私はすべて訪れたことがあり、今年1月もベトナムに赴いたばかりだが、はっきりと実感できるのは、旅行者としてはとうてい遭遇しないことが、本著の彼らには起こる。その奇遇なる体験に際し、意外なほどひ弱さをもって応ずる。笑いたくなるひ弱さだが、アジアの懐の深さへと彼らは誘われていく。普通の旅行者はその前で踏み止まる。なぜなら引き返すことが困難だろうから。彼らは「ひょんなことから」なし崩し的に体験してしまった。「アジアで生きることのはかなさ」の体験者なのである。著者の「マニラ行き片道切符 天国という名の地獄」(徳間文庫)もおすすめ!

(02年5月記)