「世界サッカー紀行2002」
著者 後藤健生  文藝春秋 1667円

サッカーで世界を串刺しにした周遊紀行

何もいまさら、かもしれない。時は過ぎた。しかし私のワールドカップ観戦法を決定づけたのがこの著書である。私はサッカーの知識は皆無に等しい。サッカー素人である。選手の技量の善し悪しはほとんど分からない。野球なら学生時代に熱中していたので、それなりの見識眼を備えているつもりだ。毎夜、ビールを片手にプロ野球をテレビ観戦する時には、テーブル脇に選手年鑑を置く。馴染みのない選手が出場したら、チェックする。選手の個々のプレーを観て楽しめる。一方、サッカーは選手個々のプレーを観ても分からない。そんな中で、この本は出場国のサッカーの実績、プレースタイルの特徴、選手育成法を分かり易く記載している。しかも本のタイトル通り、著者自身が各国に赴き実際に見聞したことが紀行文形式で随所に盛り込んである。サッカーで世界を串刺しにした世界周遊紀行になり得ている。国によって同じサッカーでもかくも異なるのか、と感嘆し、時には、なるほどこの国らしいな、とうなずいた。サッカーの「戦術」は分からないが、この本によって各国の国家的サッカー「戦略」を知った。
本の凄みは、読み手にその後の世界の見方を変えうるくらいの破壊力があること。この本は私のサッカーの見方を一変させてくれる破壊力を持っていた。

(02年6月記)