「田中真紀子」研究
著者 立花隆  文藝春秋 1500円

ザ・デイ・アフター「田中角栄研究」

その著者の新刊であれば中身も見ずに購入する作家が何人かいる。ノンフィクションであれば立花隆、辺見庸、日垣隆そして(我が)藤原新也(写真家でもある)諸氏の作品だ。立花作品の読歴は20年近くになる。しかしながら、この『「田中真紀子」研究』は購入を躊躇した。確かに、ペン1本で時の最高権力者を相手に取っ組み合いをやった「田中角栄研究」は、無知蒙昧なる田舎青年だった私にとって、腹の底からたぎる思いで読んだ作品だった。でも現在、娘の「真紀子」の方には興味はない。「真紀子」は時代の道化師であって、それ以上の者にはとうてい思えなかった。
ところが、この著作の前書きを立ち読みすると、「この本の主人公はむしろ、田中角栄といってもいいかもしれないし、日本の政治そのもの」、「田中角栄がかわらないと、日本の政治の今はわからない」、「本書は(中略)もう一つの『田中角栄研究』でもある」というようにこの本の性格が説明してあった。であれば、読みたい。いわばザ・デイ・アフター「田中角栄研究」とやらを。
前作「田中角栄研究」が調査報道の王道を行く論文とするならば、今回の作品は、政治物語という印象だ。物語の主人公は田中角栄、時代は戦後高度成長期、舞台は自民党、語り部は立花隆。近年、出てきた新証言が随所に盛り込まれており、当時の時代考証を支える。女の愛情と嫉妬と憎悪というものも出てくる。かくもドラマチックであったとは。

(02年9月記)