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冒険者カストロ
著者 佐々木譲  集英社 1600円
「やっぱキューバは最高っすよ!」

私の店で長くアルバイトをしていた青年がスペイン語を学ぶためにキューバに私費留学していた。その彼が語ったキューバの体験談は興味深いものであった。「出会った多くの人達がモラリストなんです。ほんと教育を大切にしている国です。よく学びよく遊べというか、スポーツやダンスの楽しみ方がうまいし」。最後は強調しても余りあるように「やっぱキューバは最高っすよ!」と。
彼のキューバ感は、キューバ建国の父ホセ・マルティの建国思想と見事なまでに重なる。モラルを重視した社会づくり、教育に力を注ぐことはホセ・マルティ革命の目標であった(「カストロ 革命を語る」同文館より)。それから貧富の格差の解消は、他国と比べて富者が極端に少ないようだから、不本意な形ではあろうがこれも実現?した。神は意地悪である。カストロは自ら「自分は革命の使徒マルティの弟子である」と繰り返すように、カストロの国づくりの原点はここにある。
前置きが長くなった。この本はキューバの最高権力者フィデル・カストロの生い立ちからキューバ危機あたりまでの前半生の評伝である。読後感は気持ちよい。男の生き方としてかっこいい。現代の英傑物語である。これはチェ・ゲバラや坂本龍馬の評伝を読んだ時と同じだ。ただ、残念なのは、彼の前半生で終わっていることだ。彼の後半生こそが私の知りたい所なのだから。確かに革命後の後半生はドラマチックではないだろうし、情報が不足していることだろう。しかし、いわば純粋なまま散り伝説のヒーローとなったチェ・ゲバラに対して、カストロは今も生き続けている。革命後もアメリカの強行なる反キューバ施策、援助国ソ連の崩壊と、国の舵取りは困難を極めたことだろう。カストロの後半生(そこにキューバの陰部も潜んでいるのではないか)を描く、この続編が刊行されることを期待したい。

(02年10月記)