南西シルクロードは密林に消える
著者 高野秀行  講談社 1900円

ユーモアたっぷりの芸人風辺境紀行

本書は中国・成都からビルマ北部を通りインド・コルカッタまで「世界でいちばん古いシルクロード」を「戦後はじめて踏破する」という辺境旅行記である。ビルマ北部とインド・ナガランド州は外国人の滞在を許可していないので、非合法に入境し、その地域の民族独立ゲリラの手助けを受けながら先へ進む。
著者の早大探検部出身の高野秀行は、前作「ビルマ・アヘン王国潜入記」でビルマ北部のワ族の実態を潜入ルポ。著者自身がアヘン中毒になりかける。彼の独自性は、身を削ってまでやる突撃精神と、そのユニークで軽妙な芸人風語り口である。サービス精神旺盛な人だ。今度の新刊では、ビルマ北部のカチン族、ナガ族の反政府ゲリラ組織の懐に潜入し、ユーモアたっぷりにその地域の見聞を披露する。単に出発点から終点までの横断行ではない。彼の芸人風の「おち」を楽しみながら、その民族が何を食べ、何を生業にし、何を信じているのか、その存在すら知らないようなアジアの少数民族の「人間味」が分かる仕組みになっている。
ビルマ北部のカチン族といえば、吉田敏浩の「森の回廊」がある。あの伝説化すらしている名著「森の回廊」とどうしても比較されることになるだろう。高野は、近年、ライターとしてスランプ状態で、「典型的なひきこもり」、「半アル中」状態だったという。それを打破するための起死回生の旅が今回の本に結実した。「森の回廊」は本当にすごい本だが、高野のここまで身を削ってまでやる芸人風辺境紀行もこれまたすごい。
同じ早大探検部先輩格の小説家・船戸与一との最近の雑誌対談で、船戸から「高野も小説を書いた方がいいよ」と勧められていた。高野のユーモア感覚と芸人風話術からすれば小説も面白いだろう。しかし、私個人的には彼の辺境ルポをまだまだ読んで みたい。

(03年4月記)