生きる者の記録
著者 佐藤健  毎日新聞 952円

死ぬ過程を書き留めた希有の書

誰もが通らなければならない過程がある。ただ、その過程は人々の日常からは隔絶され、遠ざけられている。人が死に至る過程は、誰も皆、不可避なことであるが、できるなら考えないでおこうとする。
この本の書き出しはこうだ。「定年を目前にして、『末期がん』を宣告された。どうやら長くないらしい。生涯一記者として、<生老病死>という人類普遍のテーマを追い続けてきたこの僕が、最後の2文字をノド元に突きつけられたのだ」。
新聞紙上(毎日新聞)でこの連載が始まり、読者からも大きな反響があったそうだ。私も友人からこの連載のことを知らされ、すぐに読み始めた。佐藤記者は末期ガン患者がよく利用する秋田県玉川温泉の湯治場へと向かう。ガンに効くという「岩盤浴」の様子、末期ガン患者たちの語らい、「生」と「死」とに向き合う濃厚なる時間。「自らの肉体を現場としてルポルタージュ」する文と豊富な写真にぐっ~と引き込まれる。
病床では、毎日新聞の後輩記者が付き添い、随時、死に至る様子を描写。昏睡状態に入り、臨終を医師が告げると、「奥さんが拍手した。そして息子さんが、みんなが拍手して送った」。じ~ん、とくるシーンだ。死んだ瞬間に拍手されるとは、なんと素敵な死に際なんだろう。
死に方、死ぬ過程を書き留めた希有の書といえる。

(03年6月記)