古武術に学ぶ身体操法
著者 甲野善紀 NHKアクティブ新書   700円

「古武術」なのに斬新、ユニークな身体論

著者はプロ野球の桑田真澄投手の再生に導いたことで一躍、有名になった人だが、
これほどまで自説の身体操法が斬新、ユニークだったとは思いもよらなかった。それ
でいながら、なるほどと説得力に富む。
古武術という言葉から、何やら古めかしく、昔はこうなんだ、というふうに伝統に
固執している印象が私にはあった。多くの人もそうだろう。この本はお見事と言って
よいほどそんな先入観を喝破する。
著者が主張する身体操法としての「井桁崩し」理論は、現代スポーツ理論とまっこ
うから異にする。格闘技にしろ球技にしろ、身体を捻って「ため」を作るというのは
合点のいく理論として、定説化していると言い切ってもよかろう。「井桁崩し」理論
は、捻らない、うねらない、ためない、ことを諭す。うねりを伴う「ため」という動
作がなぜに弱点を伴うのかを明晰に説明する。「とにかく動きを省略したい。分数の
計算に喩えれば、約せるものは約してすっきりした形にしてから計算したい」。「た
め」をつくらず、「遊び」を省略し、「力が突然でてくる」ようにする、という。
本書は古武術を通じての身体論に留まることなく、発想法、組織論、教育論、ある
いは比較文化論などとしても読み応えがある。
「基本が大切といっている人のほとんどは、基本が大切らしいとったレベルだと思
います。私は、私のなかに基本を作らず、絶えず基本が何なのかを探求するようにし
ています」(発想法)。「私の会はないないづくしで、段位がない、イベントをしない、支
部がない、役職も作らないという会です」(組織論)。
この本は、各種目の現役運動選手、その指導者、ビジネスマンなどいろんな分野の
人たちが大いなる刺激を受けるはずだ。私事で言えば、学生時代に熱中、実践した芦
原空手の「捌(さば)き」理論と同等の刺激的な内容だった。
(03年11月記)