石川文洋のカメラマン人生 貧乏と夢編、旅と酒編
著者 石川文洋  えい文庫   各740円

熟年カメラマンが語る旅と酒と今の夢

石川文洋といえばベトナム戦争時に活躍したフリーランス・カメラマンで、彼の青
年期のベトナム戦争作品「戦場カメラマン」、中年期の作品「報道カメラマン」とい
う代表作がある。そして、本著は熟年期の記録とでもいえる、還暦60歳を迎える年
代となった彼の活動記録、身辺雑記を書き綴った最新のエッセイ集である。久しぶり
に彼の本を手に取ったきっかけは、昨年、「65才の挑戦」と題して日本縦断の徒歩
旅行を実行したからだ。
私にとって、彼の著作は、学生時代からなにか勇気を与えてくれるものだった。
「報道カメラマン」の文中だったと思うが、「就職と結婚は30歳になってからでい
い。それまでは世界を旅するのもいいのではないか」という主張は大きな励ましとなっ
た。彼は酒場で思い浮かぶことを書きながら自分のノートを相手にひとりで呑むとい
う。私も酒場でその呑み方に倣った。
本書を読めば、日本縦断徒歩旅行のきっかけ、彼の近況が分かる。現在は長野県在
住、、「日本一ヒマなカメラマン」を自称、いまでも継続されている郷里沖縄と青春
期の場所ベトナムとの深い関わり合い、60歳を迎えての再婚、そして、旅と酒と今
の夢について。「フリーランス」の生き方を選んだ熟年カメラマンの日常、気概、物
事の好みなどが、これまでの作品と同様に、淡々と率直に書き綴ってある。決して技
巧の利いた文章ではないし、本職の写真撮影だってそううまいとは思ない。でも、伝
わってくる。勇気が湧いてくる。才能とか能力を問う前に自分の夢はなんなのか問う
こと、出立はそれからだよ。著者からそんな優しい語りかけをもらったような気分だ。
(04年1月記)