道路の権力
著者 猪瀬直樹  文藝春秋   1600円

権力の意思、決定過程を描く

猪瀬直樹は行動する作家といえよう。調査報道として「日本国の研究」で霞ヶ関に
巣くう特殊法人を問題提議した。その問題を世に問い、改革の必要性を説いた。普通
はジャーナリストとか作家という人種の役目はそこまでだろう。しかし、著者は行動
に出た。自分のテーマとした調査報道を権力の中枢まで持ち込んだ。政治舞台へ身を
投じ、国家の権力決定機関の渦中の人になっていく。「道路の権力」はその権力中枢
部の意思、決定の過程を描いたものである。私は道路公団の民営化に興味がありこの
本を手にしたのではない。興味深く思ったのは、著者が自分のHPで語った次の言葉
に尽きる。
「『ブッシュの戦争』では、よくもあれほど詳細にホワイトハウスの内部が描か
れたと驚いた。(中略)日本の権力は徹底的に閉じています。でも道路公団の民営化
は、たまたま僕が提案した。だから日本版の『ブッシュの戦争』を、『道路の権力』
として描けたらと思ったのです」
「道路の権力」を469ページにしたのも「ブッシュの戦争」と同じページ数にし
たかった、というくらい意識している。
では、権力中枢部の内幕が克明に描かれているかと問えば疑問は残る。これは当た
り前のことだが、その内幕とは当事者である彼個人のフィルターを通して見る権力世
界であり、読み手はその定点から権力中枢部を覗くことになる。猪瀬直樹は辣腕で、
自信家で、論争に長け、時に強引で、作家である割りに政治的で、権謀術も行使する。
その姿が各場面でちらちらと見える。いわゆる、やり手であるが、近くにはいて欲し
くないキャラクターだ。それでもこの本は引き付ける磁力がある。政治とは、あるい
は重要な事はと置き換えてもいい、議論することにより決定を図り、決定事項を精緻
な表現で文言化し、決定プロセスを公開するという、その実践に挑んだ作家の強烈な
る意志が伝わってくるからだ。
(04年3月記)