現代日本の問題集
著者 日垣隆   講談社現代新書   720円

日垣隆の評論最前線の発言集

著者は私がいま最も注目しているジャーナリストである。法律、医学の分野に精通 しており、その評論分野は事件、国際情勢、科学、教育、ファッション、ショッピングなど幅広い。
対象テーマへの切り口も鋭く、時に硬派に、時に軟派に、毒を盛ることもあれば、軽妙洒脱に語ることもある。
この「現代日本の問題集」は、そんな著者の評論最前線の発言集である。著者自身 があとがきに「日本人が強く関心を持ち解決してゆくべき問題群をひとりで俯瞰できた」と語り、
現代日本の諸問題を取り上げ、精緻で明快な提言は説得力に富む。
例えば、「ショッピング・リテラシーを身につける」の章では、「不安を蹴散らす
最良の処方箋は、安心と安全のリテラシーを身につけることです」、「安心と安全は
ギャンブル(若死にする方に賭ける生保や、現在を犠牲にしての貯蓄や何になるかわ
からない子どもへの教育投資は典型的なギャンブルです)によってではなく、自分の
現在への投資によってのみ入手しうるものです」、そして、ショッピングは自分への
投資の実体的なコアになり得ると説く。
私は著者の近年の作品をすべて読み、たいへん影響も受け、「必読の作家」ではあ
るのだが、読了後、正直、何かしら物足りなさをおぼえる。いつも、読めば元気が出
るものの、心底の充足感は湧いてこない。もっともっとあなたの評論に触れたいとい
う欲求と、一方で読んでもまだ物足りないという気持ちがない交ぜになる。この本の
各章のテーマをもっとつっこんで知りたければ、著者はちゃんと用意してくれている。
「凶悪事件はすべて起訴されるべきである」(第13章)は「裁判官に気をつけろ!」
(角川書店)、「心神耗弱を廃止せよ」(第14章)は「そして殺人者は野に放たれ
る」(新潮社)などがそうだ。しかし、それを読んでも私は、もっと、と要求したく
なる。そんな要求をしたくなる作家はいまは彼をおいていない。凄腕のジャーナリス
トには違いないが、もうひとつ本を閉じた後までしばし深い余韻が続くような彼の
「作家」としての作品が待ち遠しい。
(04年7月記)