冒険投資家ジム・ロジャーズ 世界大発見
著者 ジム・ロジャーズ   日本経済新聞社   1800円

稀代投資家の世界分析紀行

3年かけて特製メルセデス・ベンツに乗って世界116カ国を走破。しかも旅の伴
は若い美女。旅費はふんだんにある。うらやましい限りである。むかし旅する作家・
沢木耕太郎は、旅はお金をかけなければかけないでかえって見えてくる世界がある、
というようなことを著作で語った。確かにそういう面もある。一方、潤沢な資金と長い
年月かけた旅は、普通の旅行とはまったく違った世界観察の地平が広がっているこ
とだろう。特に旅人がひとつの分野で習熟した知識と経験とを兼ね備えた人物である
ならば。
著者はニューヨーク・ウォール街で投資会社で働き、「投資の鬼才と名を轟かせ」、
37歳にして一生くっているけだけの金を残し第一線を退く。その後は世界周遊に乗
り出す。
稀代の投資家は、投資する価値があるか否かという観点で訪問国を分析する。投資
家の世界分析紀行である。闇両替の有無、そのレート格差、役人の官僚主義の度合い、
国民平均年齢(平均年齢が若いとその国は有望と見なす。ちなみに1位はメキシコ、
2位はアイスランド、3位はニュージーランド、4位は韓国だと書く。ちょっと以外)
など具体的な例証、体験が並ぶ。彼は国家統制主義を嫌い、中央集権的政府を強烈に
批判する。私はこのへんのアメリカ流自由経済信奉の旗頭的な物言いに違和感を感じ
た。ただ、世界の現実は、そうした国家統制主義を取った国々は経済的にたちゆかな
いというのも近年の実態ではある。
この本には前作がある。『冒険投資家ジム・ロジャーズ 世界を行く』は1990
年前後にバイクでの世界一周した旅の記録である。この両方の併読をお勧めしたい
(発行元の日本経済新聞社の出版担当者に言いたい。タイトルがダサすぎる)。この
2冊読むことによって、稀代の投資家の眼を通して世界の変遷を後追いできる。旅す
る投資家は今回の旅である『世界大発見』で、前回の『世界を行く』の時より投資し
たい国は減ったという。さらに通貨においては、いま世界には信頼できる通貨はない
と断言する。以前はドイツマルク、スイスフランがそうだったが、「健全は通貨はど
こへ行けば見つかるのだろう。米ドルは致命的な病にかかっている。ユーロも問題を
抱えているし、円も同じだ」。
また、前回の『世界を行く』では「アフリカを楽天的にみている」と経済発展を有
望視していたのだが、『世界大発見』では、問題は山積、悪化していると嘆く。アフ
リカの病巣は深そうだ。その解決への著者なりの処方箋には注目。
なんだ、稀代の投資家は、世界を広く見渡せば、むしろ世界の状況は押し並べて悪
くなっていたというのか。しかし、例外として、いまの中国だけは格別のようで、前
途洋々、いちばんの「買い」の国と、中国経済を絶賛している。
(04年9月記)