万国「家計簿」博覧会
著者 根岸康夫   小学館   1200円

ミドルクラスの家計から世界を見る

エジプト、アルゼンチン、ロシアなど13カ国のその国のミドルクラスに相当する
家庭を訪問して、収入、支出項目など家計にまつわることを聞いたインタビュー集。
ほぼ偏りなく全世界を広域に取材対象にしたところがよい。企画アイディア、取材方
法はシンプルそのものだが、世界のミドルクラスの家計の中身を聞き出すことで、マ
スコミやジャーナリズムでは決して登場しないリアリティーのある世界が見えてくる。
読後の感想を箇条書きにまとめてみる。
1)どの国のミドルクラスも子供の教育に熱心だ。子供は少ないが教育費をたくさ
んかけている。まるで教育熱心は世界のミドルクラスのDNAのように。
2)途上国が特にそうだが金持ちはずっと金持ちでいられるというシステムの根幹
になっているのは、相続税の有無(もしくはあっても税額が少ない)であることに気
付く。世界各国の家計状況から相続税のキーワードが何度か登場した。相続税が高い
日本はこの点はよいことだと実感。
3)本の冒頭に著者自身のひと月の家計支出が掲載されている。子持ち49歳の家
庭で70万円強。確かに日本の東京近辺在住者でその年齢ならそれくらいの出費はミ
ドルクラスの範疇かもしれないが、ミドルクラス意識ながらも地方在住者からすれば、
「多すぎる」と違和感を持つ額だろう。同様にここに登場した家庭はその国の首都も
くしくは大都市在住のため、その国の中産階級の総体を表しているわけではない。そ
の点は割りびいて考えた方がよいようだ。
4)世界中の各家庭の家計を見ることで、自ずとその国の医療保険、年金、税制度
が簡単ながら分かる。或いは労働に対する報酬の度合いも。私がこの本に登場した家
庭の国で最も好印象を持ったのはフランスである。いい制度の国だな、と思う。でも
よく考えれば医療保険、年金など社会保障、労働報酬は日本とあまり違いない。とす
ると日本はよい制度の国であるということを、他国の状況を手鏡にして再認識するこ
とでもある(ただフランスと日本では労働時間がまったく違うのだが)。しかしなが
ら日本はこれまでの世界に誇れる社会制度が財政面で綻びが生じており、それをいか
に是正、維持していくかが緊急課題でもあるのだろうが。
最後に、正直言うが、債務破綻したアルゼンチンや経済的に困窮するケニアなどは
別として、概ねこの本に登場した家庭は私の生活レベルよりも高い。嗚呼~

(04年11月記)