さびしいまる、くるしいまる。
著者 中村うさぎ   角川書店   1500円

もっとぶっちぎれ!中村うさぎ!

ひと言で言えば、女流作家のホストクラブ探訪記である。女流作家といっても、ちょ
っと普通の女性ではない。ぶっちぎりの浪費癖で借金してでもブランド品を買いまく
ることを売りにしている「ショッピングの女王」こと、あの中村うさぎである。「最
近、珍しく、キャラの立った作家」は、本書の中でも自らをこう語る。「自分を売る
職業・・・それが風俗や水商売なら、私の仕事だって同じことだ。(中略)私には、
「自分を切り売りしている」という意識が常にある」。「そんなふうに自分を切り売
りしている人々は、必ずそのことに復讐される。魂が壊れていくのだ」。であれば、
魂を壊そうとか、それこそ怖そうで、実行できない小心者の読者にとっては、あの中
村うさぎが今度は、ホストクラブへのめり込み、一人のホストへ入れあげていく、そ
の壊れ具合、常人の追随を許さないぶっちぎれ具合をみたいものだ、と期待したくな
る。
確かに、この本を書くうえでも、身を削り、相当の覚悟を必要としただろう。まず
最初から本人のシリアスな告白がある。「最初の結婚は、大失敗に終わった」はいい
にしても、2度目の結婚相手は「彼は、ゲイである。毎日一緒のベッドで寝ているけ
れど、私たちは互いの裸を見たことがない」とある。このことを書いたがために、彼
女の両親はたいへんショックを受けたそうだ(『反時代的毒虫』の車谷長吉との対談
「覚悟の文学、命がけの浪費」でそう告白)。それはまさしく彼女にとっては「覚悟
の文学」であっただろう。
ひとりのホストにいれあげて、出版社には前借りの借金を繰り返し、時には税金未
納で銀行口座を差し押さえられながらも、とうとう1本100万円のヘネシーをオー
ダーするまで「命がけの浪費」にいそしむ。後半は、そこまでホストクラブになぜハ
マったかを考える。「愛と資本主義」について、「私がずっともてあましてきた飢餓
感、欠落感、孤独感」についてなどの多様なる理性的、論理的な考察が続く。そして、
最後はキャラを演じるためなのかオチャラケの文で結ぶ。
私は「覚悟の文学、命がけの浪費」を芸に著述する中村うさぎがどう着地するのだ
ろうか、に注目していた。後半の理路整然たる理屈と大人然とした結末には、はっき
り言って落胆した。結局、それならば、自分の身を削って、というよりも単に「商品
化」しただけではないか。この作品は身を削るぶんと技巧による「商品化」との按配
で後半は商品化が勝ちすぎている。その後、美容整形クリニックと女性誌とのタイアッ
プで「プチ整形」ものを書いたことは、自分の身を「商品化」しているだけの分かり
易い証左である。
もっとぶっちぎれ!中村うさぎ!

(04年12月記)