ブックオフと出版業界
著者 小田光雄   ぱる出版   1800円

ブックオフは出版業界の「パラサイト」なのか

ブックオフへの強烈な批判本である。「書店、出版社、取次、古書店が苦悩する出 版業界を尻目に、ブックオフはなぜ膨張し続けるのか?」を問答形式で解き明かしていく。その批判の舌鋒は辛辣である。出版社を手がける著者にとって、ブックオフはとうてい許し難い存在のようである。横道にそれるが、著者の著作を読むのはこれが2冊目で、最初は『船戸与一と叛史のクロニクル』だった。私は船戸与一ファンとしてそれを読んでいたが、まさか著者が出版経営者であったとは思いもよらなかった。意外なところでまた遭遇しましたね、という感じだ。さて、本題。「本の値段なんて
新刊本だっていい加減に決めているんだと思う。古本だって、キレイか汚いかで、決
めちゃえばいい」というブックオフの幹部が言った発言を引用し、出版社経営の著者
は、本はいかに緻密に原価計算され、丁寧に作り上げられているかを述べ、烈火の如
く怒る。両者の考えは、もはや本に対する思想が対極化している。ちょうどライブド
アとフジテレビのニッポン放送経営権収奪抗争で、フジテレビ会長が「報道とは」と
口にしたのと似ていなくもない(またもや横道にそれるが、「報道とは」と言うフジ
テレビはむかし、面白くなければテレビじゃない、と喧伝していた)。儲かればいい
というのではない、本も報道も文化、社会を支える共有の財産なのだ、というような
主張は確かに正論であろう。
一方、本の利用者にとっては、ブックオフは魅力的な書店でもある。私も年に数回
行くが(私の生活圏に店舗があればもっと行くだろう)、1冊100円コーナーで掘
り出し物がないか探すのは楽しいものだ。100円なら買うという本もあれば、本好
きとして売れ残りのコーナーからおのれの目利きで好著を発掘してやるという心理も
働く。反面、ブックオフなど新古書店が売りとする新刊本が半額で買えるというのは
魅力を感じない、。なぜなら読みたい新刊本が店頭に並んでいたことなどないからだ。
利用者は、既存の書店、従来の古本屋、ブックオフなど新古書店、それから図書
館が共存して、選択肢が多岐に渡っている限りに置いて、喜ばしい状態と言える。た
だ、その共存が厳しい状況になっていることが、本書の前半に詳述されている(また
『だれが「本」を殺すのか』佐野眞一著にも詳しい)。概ね出版社、取次、書店が経
営的に苦戦する中でブックオフだけは急成長している。製造側の作家、出版社には一
円の見返りもなく、素人が始めたブックオフが業界の「パラサイト」として収益を上
げる、いびつな構造になっているということだ。著者も近年の出版不況をすべてブッ
クオフのせいにしているわけではないが、あまりにも業界のバランスが崩れているこ
とを憂いている。
私は今回、ブックオフ礼賛本である『ブックオフの真実』、『ブックオフ 情熱の
マネジメント』、『ブックオフ革命』の3冊にも目を通した。創業者である坂本孝社
長は斬新なアイディアを持った起業家なんだなあ、と率直に感心したのが3割、あと
の7割は妙な精神主義を謳うなど薄気味悪さが際だっていた。私の感じたいかがわし
さ、薄気味悪さの正体は本書後半に「カルト・ビジネス的要素」などの項目できっち
りと言及されていた。
最後に、全国どこでも同じような品揃え、店作りの蔦屋書店はじめとする金太郎飴
チェーン書店、そしてブックオフなどが席巻してしまうのは、本の光景としてあまり
に寂しい。それらの店内では、過度に明るい照明の中、「いらしゃいませ~ぇ」とア
ルバイト・スタッフたちがあさっての方向を向いたまま次々と代わる代わる連呼して
いく声が鳴り響く(あれは「山びこ方式」といって万引き防止策としてのマニュアル
であることをブックオフ坂本社長の発言で初めて知った)。「いらしゃいませ~ぇ」
と・・・・。
(05年3月記)