韓国風もつ鍋を旅仲間と食う。
○月○日
韓国風もつ鍋を作って店で旅仲間と一緒に食う。
コチジャンという唐辛子のよくきいた韓国の味噌を使い、もつ肉と野菜を入れる韓国の庶民的鍋料理である。初めてこの鍋料理を食べたのは、4年前の釜山でだった。韓国人の知人が案内してくれた食堂で勝手に出されたのがこの料理だ。路地裏にある一見民家と見間違うような小さな食堂であったが、出された鍋料理は抜群にうまかった。スープにこくがあり、辛いけれども舌触りはまろやか。文句なしに絶品だ。翌年も、これを食いたいがために釜山を訪れた。店のおかみは「去年も来たでしょう」と顔をほころばせた。1年ぶりに改めて食ってみてもうまかった。
その翌年もその店に行ったが、店は姿を消していた。仕方なく他の店で同じものを頼んだが、あの店の比ではなかった。以来、自分で作ってみるが、あの店で食べた時のような味はとてもだせないでいる。幻の鍋となってしまった。
○月○日
グラフィック雑誌『ナショナル・ジオグラフィック』を見ていると、キャノンの広告の中に、写真家・市原基さんの写真が使われていた。
寡作な写真家の人だけに、久しぶりに最近の作品を見ることができた。市原さんはアジア・モンスーン地域における水をテーマに写真を撮り続けている人だ。以前、『週刊朝日』に連載されていたダイナミックなタッチの写真とそれに添えられている軽妙な文章にぼくはたちまちフアンになった。共感したのは作品だけでなく、一つのテーマに12年もかけるというその長さと、「アジアの水景色」というテーマ設定になんともいえぬスケールのでかさを感じた。
この春、福岡で『アジア・モンスーン』の写真展が開催されたので観に行った。市原さんも会場にみえられており、「たしか昨日も見に来て下さいましたね」と声をかけてもらい嬉しかった。
「撮影の時はいつも一人ですか?」
「ええ、自分のペースで仕事ができますから」
「また週刊誌とかへの連載の予定はないのですか?」
「締切があるような仕事は好きでないから、もうやらないと思います」
アジア・モンスーンが終われば、今度は「アフリカの火とエネルギー」をテーマにこれまた12年間かけるそうだ。こんな大きなサイズの仕事があることを知らされて驚くばかりであった。
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○月○日
ひょんなことから、店でインターネットの実演をしてもらった。
ぼくの要望でニュージーランドの観光のホーム・ページを開いてもらう。書かれている内容は一般的でたいしたことはなかったが、インターネットは使い方次第で旅行の形態を変えうるな、と感じた。例えば、ニュージーランドのアウトドア・スクールで1年ほど学びたいという人がいたとする。それに関する情報を入手しようとすることは容易なことではない。それがインターネットを利用すれば、技術的には入学手続き、授業料の支払い、あるいはホームステイ先を見つけることまで個人ベースで可能となる。ある意味では個人旅行に革命を与えるかもしれない。ただ、未知な場所に何も分からなま行くという旅の醍醐味が失せてしまう恐れもあるけれども。
(95年12月)
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